エネルギー自給自足の建築技術 設計ノート DesignNotes

密閉集熱回路の作り方

IFCJ株エコライフラボ O.バルテンシュタイン

太陽熱を熱収集パネルから蓄熱タンクに運ぶのは集熱回路です。 作り方を紹介します。 給湯配管の経験者であれば、難なくこなせます。 ここで、僕の日々のメモから引用して、いくつかのヒントを紹介します。

太陽熱機器の設置、配管、立ち上げ、動作確認は主な現場作業ですが、 設計と設計決定の理由は強く影響しますので、多少触れます。

太陽熱 作り方太陽熱 作り方


なぜ密閉か?

媒体循環の開放型太陽集熱回路は可能です。 密閉にする主な理由は つまり冬対策、設置の作業性、運用効率、耐久性でメリットがあります。

密閉集熱回路の機器

各要素とその役割を紹介します。
最初、断熱材なければ、損。
配管熱媒体の運搬に必要。あまり細いとポンプの負担があがり、 電気消費が増えます。
熱収集パネル太陽からの輻射熱を媒体(不凍液)に伝います。
熱交換器熱を循環媒体から蓄熱タンクに伝います。
循環ポンプ熱媒体を押します。その動きによって、 熱は初めて集熱パネルからタンクに移動します。
温度計動作確認、監視、そして安全管理に必要です。
圧力計立ち上げと日々の監視、安全管理に必要です。
流量計動作確認、ポンプの設定とソーラーシステムの測定に必要です。
膨脹器通常運時で回路の圧力安定させます。集熱パネルの温度超過停止運転、媒体を一時受け、その後回路に戻します。
安全弁回路内最大圧力を制限します。危険回避と配管は列防止に、圧力が異常上昇したとき、回路を開放します。
媒体注入口立ち上げ時、循環回路の媒体(不凍液)を注入と同時に、空気抜けに使います。
空気抜き循環液体から邪魔な空気を集め、出しやすくします。
逆流防止弁温度差による夜間の熱排出など意図しない媒体の動きを防ぎます。
最後、断熱材なければ、損。先ほども載せましたが、 もう一度繰り返したいぐらい重要です。せっかく集めた熱を 無駄にしないよう、各配管、各機器、パネルの裏、蓄熱タンク に十分な性能の断熱が必要です。


理想のレイアウト

設計で施工、立ち上げと運用をし易くすることができるので、 ここで水力学的に理想の密閉型太陽熱主熱回路を紹介します。

当たり前だが、配管、特に集熱パネルからの帰り(つまり熱いほう)の配管はできるだけ短くします。 良い断熱と併せて熱損失を抑えます。

空気抜きは難しくなりますので、配管の上下の凸凹を避けます。 集熱パネル自体もそのため数度斜めに設置します。 凸凹なしの配管に熱収集パネルの最上位の空気抜き兼注入口があれば、 循環媒体注入作業が大変楽になります。空気抜きといっても、自動空気抜きはだめで、ボール弁を使用します。

パネルも配管も温度変化とともに伸び締めします。 耐久性のため動きを許すように固定します。

不凍液の濃度と種類

濃度は、凍結防止機能は基本なので、メーカーの濃度表に従えば良い。 種類の選択基準はシステムの最高温度と液体の毒性です。 不凍液は高温で劣化しますので、集熱パネルの停止温度で選びます。 熱交換器で直接上水の給湯をすれば、劣化したときの漏れの可能性がありますので、 人体に無害の製品を選ばなければいけない。 二重分離構造になっている熱交換器の場合はこの制約はありません。

ソーラーシステムの運用圧力

安全弁の開放設定は0.6Mpaです。出荷設定・固定でOK。 圧力スイッチの停止設定は0.4Mpa、 膨脹タンクの設定は0.3Mpa 設置時には確認・調整が必要。

通常システム運用圧力は0.01~0.3Mpa  設置時調整値 0.1Mpa が目安です。

立ち上げ

集熱回路の立ち上げ時、蓄熱タンクは熱を受けられる状態にあるのは前提条件です。 コントローラーの設定は機種によって異なりますので、ここで省略します。 循環液注入作業中は集熱パネルが確実に50度以下でなければ危険です。 火傷の恐れがあります。 集熱パネルに遮光シートをかけるなど全作業期間において冷えている状態を保ちます。 仮に太陽が当たっているパネルに循環液を入れますとその瞬間で沸騰し、 蒸気が熱いまま空気抜き口から噴出します。

作業自体は簡単です:外部の注入ポンプで循環液を入れながら、 空気をシステムから抜きます。 空気がなくなってもしばらく(30分〜数時間)外部のポンプで循環を続けます。

細かい空気泡もよく見えるように透明なホースを使います。

外部のポンプと細かいフィルター(20um以下)の組み合わせを利用します。 生産、運送、施工時で集熱回路に入ってしまった不純物を取り除き、循環ポンプを保護するためです。

最後、出口を閉め、加圧して、注入口を閉め、外部のポンプをはずして作業は完了します。

動作確認

回路の密閉性の確認: 循環液注入後、圧力計が下がらなければOK。

回路循環の確認、回路空気抜きの確認: 循環ポンプを手動で動作させ、異音がないことと、空気の音がないこと、流量計で仕様通りの値を確認します。

基本性能の確認

現場は電気供給など、安定して太陽熱システムを運用できる状態になったとき、自動運転設定ONにし、 集熱パネルの遮光シートを外します。 運用開始の瞬間です。

よく晴れた日、太陽熱の集熱を確認します。 温度計、流量計の値を読んで、出力の計算をします。

瞬間瞬間の太陽熱の収穫は温度差x流量x媒体の比熱x媒体に比重です。

例えば写真の温度は上がり35度、帰り60度、つまり温度差25Kと流量8l/minute、 循環液の比熱1.16Wh/(kg*K)、比重1kg/l で出力は
25K * 8l/min * 60min/h * 1.16Wh/(kg*K) * 1kg/l = 13.9kW
よく晴れた日で測定し、太陽パネルの仕様と合えば、合格。


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